ランチセミナー


協調的知能共同研究
ランチセミナー
人と社会と共存する知的システムを構築するための協調的知能「人と協調するAI」をテーマとして、
情報学研究科知能情報学専攻の先生を講師にお招きし、
主に学部生を対象としたランチセミナーを毎月開催します。
昼食付き※
月1開催!
12:10 ~ 12:50
10/28
(月)
河原達也
先生
アンドロイドERICAによる
人間レベルの音声対話
12/18
(水)
西野恒
先生
AIで視る
11/13
(水)
山本章博
先生
文字列データを対象とした
教師無し学習とその周辺
1/21
(火)
熊田孝恒
先生
人と協調する知能
◆参加費:無料
◆対象:主に京都大学の学生
◆事前申込:不要
◆各日とも当日11:55より現地で受付開始
※昼食(弁当)を提供しますが、数に限りがありますので参加者多数の場合は昼食の持ち込みや立ち見をお願いすることがあります。予めご了承ください。

主催:京都大学大学院 情報学研究科 協調的知能共同研究講座

お問い合わせ:contactci.ist.i.kyoto-u.ac.jp



これまでのランチセミナー


2019年12月18日 第22回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第16回ランチセミナー***
日時 2019年12月18日(水) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

西野恒先生 (コンピュータビジョン分野)
AIで視る
本日のセミナーは,西野恒先生から,我々の身の回りに溢れており,既にかなり実用的な技術となっているコンピュータビジョンの分野について,それが産業的に実用化されているからといって研究として終わった分野ではなく,まだまだ解決するべき課題が多い分野であることの講演を頂いた.
ご講演は,画像をただ「見る」のではなく,その環境を理解するために「視る」ための研究のお話で,西野先生が大切にしておられる「何が視えているのか・いないのかを常に考える」,ことをテーマに,実際の画像からこういった事象がまだ視えていなかった,我々には視えないが機械なら視える,を挙げられながら6つの研究について紹介いただいた. まず最初のテーマは,我々が容易に可能な人物と銅像の見分けが機械が出来ない問題を解決するお話で,画像中の対象の材質を認識することに基づき,局所的な情報と大域的なコンテキストを利用して「素材を視る」ことに取り組まれたご研究だった.2つ目は「人の流れを視る」お話で,従来の人物トラッキングのように疎な画像から前景(人物)を抽出することなく,逆に人混みという状況を活かして,その流れをモデル化してしまうことで,人物のトラッキングや異常検知を行う枠組みであった. さらに,水が近赤外光を吸収する特性を活かして,異なる波長の近赤外光の減衰度合いの差から水中物体までの距離を計測することで水中物体のリアルタイム3次元形状を行う手法,リングライトを用いることで,一般的なカメラとプロジェクタのみで半透明物体内に侵入した異なる光路長の光を抽出する手法,瞳に映る外界の反射像から撮影対象者の周囲の環境やその中での注視対象を検出する手法,水面での反射像を用いることで異なる輝度での2視点画像が得られることを利用したHDRでのワンショット3次元形状復元手法についてと幅広く紹介頂いた.
機械が環境を視ることは,機械の動作を決定するために必要な技術であり,より良く視ることが可能になれば,それだけ機械が取れる行動の選択肢やその精度の向上へつながることが期待される.ご講演中に自動運転の例も挙げられていたが,今後も様々な展開が期待されるご講演であった.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2019年11月13日 第21回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第15回ランチセミナー***
日時 2019年11月13日(水) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

山本章博先生 (知能計算分野)
文字列データを対象とした教師無し学習とその周辺
今回は知能情報学専攻の山本章博先生にお話を頂きました.まずは協調的知能に関わる話として,京都大学の教育理念についてのお話しがありました.京都大学は,多様かつ調和のとれた教育体系のもと,対話を根幹とした自学自習が求められている.対話は協調で,自学自習とは教師なし学習と解釈できるが,それでは自学自習とは一体なにを学習しているのか?というのが今日のお話しのテーマでした.
その前にテキストマイニング・言語処理・生命情報学などで用いられる,文字列データの機械学習の紹介があり,音楽のスコアの解析もこの範疇に入るという話をされました.これらは正解と不正解のある教師あり学習の話であり,次に教師なし学習の話へ.ここでは教師なし学習は教師信号の代わりとなる情報をデータから抽出して利用する方法と総括されました.
具体的にクラスタリング等の機械学習にデータを埋め込む教科書的な方法として,まずN-gramによる方法が紹介されたあと,文字列の類似性検出においてより多くの情報を取り出す方法として,特に最長一致部分文字列に基づく方法を挙げられました.そして,その具体例として小倉百人一首の文字列の類似性検出のお話しがありました.カルタとなった和歌集は他にもあるが,ゲームとして生き残っているのはこの小倉百人一首のみとのこと.その理由として和歌の間の類似性が高いためゲーム(かるた)として成り立つのではないか,と唱えている人もいるそうです.これを検証するために,編集距離(Levenstein距離)を使ったクラスタリングの結果が示されました.編集距離とは二つの一致させるために文字列を変換させていく時の最小コストを表し,距離の性質を持つとのこと.
この他に編集グラフによる距離の計算方法,これを応用した任意のクラスタを抽出するアルゴリズムが紹介された.これは他の手法よりもその当時100~1000倍高速であった.しかし,最小一致に関する未解決問題としてStrong Exponential Time Hypothesisを紹介し,これが正しいとするとこれ以上の高速化が望めないという数理的課題を紹介されました.
トークではさらに次のステップとして対話のある(答えを聞ける場合)の学習の話もされ,協調的な機械学習への方向性を示されました.文字列データに対する距離の扱いでも,連続信号処理や点過程における理論と類似の議論が通用する点が興味深く(time-rescaling theoremやQQ-plotとの類似など),少し聞いただけで他分野でいろいろと応用が広がり,協調的知能研究にも生かされそうな実践的な話題を提供して頂きました.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2019年10月28日 第20回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第14回ランチセミナー***
日時 2019年10月28日(月) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

河原達也先生 (音声メディア分野)
アンドロイドERICAによる人間レベルの音声対話

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2019年7月10日 第19回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第13回ランチセミナー***
日時 2019年7月10日(水) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

黒橋禎夫先生 (言語メディア分野)
深層学習による自然言語処理の進展
黒橋教授による今回のセミナーでは,近年の自然言語処理技術の進展について解説され,今後の展望が示された.まず自然言語処理の大きな2つの課題として,知識の獲得と,獲得した知識の利用の問題が説明された.言語知識の獲得の問題は,2000年代におけるWebとConsumer Generated Mediaの発達により,大きな進展があった.もう一方の知識の利用の問題に対して,深層学習/Deep Neural Networkが,従来の統計的自然言語処理からさらに大きな進展をもたらしたというのが,近年の自然言語技術の進展の大まかな流れである.従来の統計的機械学習に基づく自然言語処理では,特徴抽出は人手で設計され,また個別に調整されたモジュールを組み合わせて最終的な目標のタスク処理することが主流であった.一方で,近年の深層学習に基づく自然言語処理では,大規模な言語データから事前に構築した汎用的な分散意味表現・言語モデルを元にして,入力の言語表現から目標の出力を得るシステムを単一のニューラルネットワークモデルで学習するend-to-endとよばれる方式が主流になってきている.特に,比較的基本的・低次でドメイン依存性の少ない言語処理タスクにおいては,BERTとよばれるモデルを基本にし,あとはタスク毎に追加学習を行うだけで実用的には解決されようとしている現状が解説された.それを踏まえた上で,今後は推論や感情分析などより高次なタスクに外部知識をどのように接続するか・組み込むかが重要な問題となるであろうことが指摘され,その研究プラットフォームとして対話研究の役割に期待が寄せられた.対話システムは,協調的知能システムのあり方の代表的な1つであり,今後自然言語処理研究との繋がりが今まで以上に密接になることが期待される.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2019年6月11日 第18回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第12回ランチセミナー***
日時 2019年6月11日(火) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

西田眞也先生 (認知コミュニケーション分野)
視覚科学で脳をハッキング
今回のCIランチセミナーは本年度に知能情報学専攻に着任された西田眞也先生にご講演頂いた.西田先生は人の視覚特性の研究で世界的に活躍され,さらにこれを巧みに利用したAR技術でも社会にインパクトを与えている研究者である.
始めにVRやARといった感覚を操作する技術を大別し,感覚器に与える物理刺激の再現を目指す「物理に基づく方法」と,人間の知覚として同一視される情報表現を目指す「知覚に基づく方法」に分けらた.前者はコストがかかるだけでなく限界もいろいろあるため,後者の研究の重要性を指摘された.後者の例としてRGBのモニタ画像を挙げて,視細胞のRGBに対する応答が物理世界の連続的な光刺激に対する応答と同じになる仕組み(Chromatic metamers)を紹介された.さらに上位の視覚野である第2次視覚野レベルで同様のマッチングを行う手法として,視野周辺には周辺処理が判断できる画像統計情報しか表示しない方法(Textural metamers)が紹介された.このように脳の視覚処理機構のレベルに応じて様々な知覚に基づく情報操作ができることを示された.
このような背景のもと,色・形・運動の高次の統合機構をハッキングする手法として西田先生らが開発された変幻灯が紹介された.この手法は動きのベクトルとターゲット画像を組み合わせてアニメーションを作成したのちに,元画像と異なる部分だけを白黒でプロジェクションする技術である.背景を消すのではなく積極的に使用し明るい場所でも使用できる技術で,その興味深いデモをいくつも示して頂いた.変幻灯の原理にかかわる視覚メカニズムに関して,動きの検出に関わる神経細胞の時空間的な受容野の説明・動きが色にあまり依存しないという視覚神経機構の特性を説明され,それらを利用した錯視のデモがあった.特に第1次視覚野の神経細胞のモデルを入れることで,変幻灯における動きの大きさを最適化する手法の説明があった.また,専用のメガネをかけると3次元になるがメガネのない状態では通常の2次元画像に見えるHidden stereoの紹介とそのメカニズムの解説があった.
最後にVR/ARの研究には視覚のメカニズムの研究が非常に大切であり,視覚科学者がこれを技術者に使いやすいようにモデルにするのが大事と指摘されてお話を締めくくられた.「人間のモデルをエンジニアリングに放り込む」という姿勢は協調的知能も目指すところであり,その分野を牽引する西田先生にお話を頂くことで,我々の目標も再確認された.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2019年5月22日 第17回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第11回ランチセミナー***
日時 2019年5月22日(水) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

鹿島久嗣先生 (集合知システム分野)
機械学習と集合知
本日のセミナーは,集合知システム分野の鹿島先生から,機械学習が現在様々な分野に広がっていることの簡単な紹介に始まり,典型的な予測モデルの次のチャレンジとして鹿島先生が以前取り組まれていた,グラフ構造を持ったデータを対象としたデータ解析の話までを前置きとして,人の持つ知識をうまく利用し,人とコンピュータが協力することで双方の質を高めるような取り組みについて紹介いただいた.
人工知能は入出力が定義され,データが大量に収集可能な場合においてかなり強力なツールとなり,実際に様々な分野で適応されてきているが,収集可能なデータ外の文脈などが占める情報が大きい状況では未だうまく予測することができないという問題があり,文脈依存性が高い抽象的な課題においては人間の能力が柔軟性などの点において人工知能を上回っている.このような問題に対して,クラウドソーシングの発展により,Human-in-the-loop型の,コンピュータと人の協働による問題解決が再度注目を集めている.一例として,画像識別に利用する特徴をクラウドソーシング上で集めることによって,判別に寄与されるが機械的に発見することが困難な特徴を人から獲得するような枠組みを紹介いただき,更にブースティングの枠組みを利用して逐次的に特徴生成を行うアプローチが紹介された.
クラウドソーシングを用いた枠組みにおいては,ワーカーの品質保証が課題となるため,この品質保証も機械学習で行うためのアプローチも取られている.基本的にこの品質保証の考え方は,多数派のワーカーの回答を信頼し,強化していくこととなるのだが,専門知識が必要となるような少数の専門家しか正答を導けないような多数決が解を導かない状況に対処する必要がある.そこで,専門家は単一の問題だけでなく,複数の問題に同時に正答する可能性が高いことに着目し,複数の問題への回答を同時に利用することで,結果として少数の専門家の回答が多数派となるような手法が示された.
人工知能がかなり有力なツールとして広まり,注目されている今,コンピュータにすべてを任せてしまうのではなく,人の側でもコンピュータをさらに高めるための方策が示され,またその結果として高まった人工知能によって例えば学習支援に機械学習を取り入れることによって人をより賢く導ける可能性が示唆されるなど,人とコンピュータとの協働の価値について考える講演であった.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2019年4月16日 第16回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第10回ランチセミナー***
日時 2019年4月16日(火) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

神谷之康先生 (脳情報学分野)
脳からアートを生成する
本年度のランチセミナーは知能情報学専攻の教員を中心に,人と機械の知能,そしてその協調に関わる講演をお願いすることになった.本年度の第1回目は専攻長を務める神谷先生にご登壇いただいた.
まず初めに脳の活動に含まれる情報を機械学習によって解読するブレインデコーディング技術の基礎を解説され,世界で初めて視覚画像を脳活動から再構成した研究や夢の解読の研究について紹介があった.特に最近の成果として,深層ニューラルネットワークに基づくデコーディング技術の説明に時間が割かれた.この手法ではある画像に対する脳活動から同じ画像に対する深層ニューラルネットワークの活動を予測するデコーダを作成する.このようなデコーダがあれば脳から変換した深層ニューラルネットワークの活動に最も近い活動を生成する画像として見ている画像を推定できる.特に深層イメージ再構成と呼ぶ深層の生成ネットワークを用いて適応的に入力を探索する手法により,ピクセルレベルでは違っていても大局的な構造や質感が似た画像が得られることが示された.
先進のデコーディング技術により脳の階層的な表現構造を明らかにするだけでなく,それを逆手にとってアートという応用に切り込む新しいスタイルの活動は驚きであった.協調的知能にとって人の認識の理解は必須であるが,外界を表現する脳のモデルが構築されれば,他にも思いもよらない応用例があるかもしれないと思わされる講演であった.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2019年1月22日 第15回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第9回ランチセミナー***
日時 2019年1月22日(火) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

朝倉暢彦先生 (大阪大学)
データ科学と認知モデリング〜意思決定の計算論的認知科学〜

今回のランチセミナーは朝倉先生によるデータ科学と認知モデリングについてである.朝倉先生は視覚科学・認知科学・計算論的神経科学を研究され,現在は大阪大学数理・データ科学教育研究センターにてデータ科学全般にもたずさわっている.その立場から,はじめに現在のデータ科学では高次元・小標本のスパースなデータや統制が不十分なデータが扱う機会が多いことをあげて,データ生成過程のモデリングの重要性をあげられ,実はこの問題意識や解決法の枠組みは人間がデータに対処するときの認知モデリンングにそのまま適用可能なことを指摘された(「一粒で2度おいしい”データ科学”」).
次に視覚機能の数理モデリング研究の歴史を,特徴抽出の時代・不良設定問題の時代・データの不確定性・信頼性も考慮したベイズ推定による定式化の時代にわけて概観された.特にPoggioらの標準正則理論の拘束条件がどのようにベイズに拡張されるかを,形状知覚の表面再構成を例にとってスプライン補間やマルコフ確率場等といった事前知識がどのように導入されるかを説明された.
他者の心を読むという人の心的状態の推定も不良設定問題でありベイズ推定による定式化が可能である.そこで次に,同様の枠組みでベイズ推論による認知モデリングを紹介された.事前知識にあたる他者の心の生成モデルは心理学では心の理論と呼ばれる.誤信念課題の例をとって心の理論やその発展としてより詳細な心の理論尺度について説明された.また,他者の心的状態の推定には,一般的な知識(理論)を用いて推論を行うとする説(理論説,theory-thoery)と自己を他者の立場において模倣することで推論するシミュレーション説の二つがあることを紹介された.
こうした背景知識の紹介の後に,乾先生との研究による心の理論のベイジアンネットワークモデルを紹介された.これは自己と他者の信念を含むモデルであるが,通常データが観測されたもとでこの二つの信念は独立になるようになっている(自己と他者の明確な分離).ここに自分の観測から他者の観測を予測する構造をいれることで理論説(theory-thoery)とシミュレーション説を確率的に統合した心の理論のモデルが得られる.講演では,異なる背景を持つ被験者グループの,心の理論を試すタスクに対する応答から心の理論尺度を求めた例と,モデルによる予測を比較することで,グループ間における心の理論尺度の明確な違いをモデルが表現できることを示された.年齢ごとの発達過程や自閉症患者についての予測結果も取り上げられた.
次に意思決定の問題を紹介された.アイオワギャンブル課題を取り上げられた.健常者は合理的な選択をして精神疾患患者は非合理な選択をするとされてきたが,最近の研究では標準的な人でも,最終的に損失が大きい場合でも,勝っていたら同じ手を出し続け負けたら戦術を変えるというWin-stay Lose-shiftという方法をとっていると指摘されていることを示した.そこでこれを検証するために,最近オープンになった大規模データベースに対してカード選択行動の生成モデルを作成・適用して選択パターンを抽出し,クラスタリングを行い選択傾向を分析した.これにより期待効用を最大化する合理的な意思決定ではなく、利益が高頻度の山を選好するWin-stay Lose-shiftにも整合的な方策が採られていることが明らかになった.このようにして多くの場合で健常者でも長期的な利益に基づいた選択行動をとらないことを示し,神経心理学的検査としてアイオワギャンブル課題を使用することに警鐘を鳴らされた.
最後にデータ科学が対峙する問題は認知システムの課題と同型であり,この二つを同じ問題として扱うことの重要性を語られた.
今回の講演ではベイズ推論に基づく認知モデルを実際の大規模データに適用して,実データに対する重要な知見を得るお手本を示して頂いた.またこれらの背景として,機械学習と学習機械としての人間の認知システムの相同関係を強く意識されて研究を進められている点も重要なメッセージであった.人と同様の問題に対処する機械,特に人と協調する機械を作成するときに必然的に機械と人のアルゴリズムの相同性が意識される必要があるだろう.
世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2018年12月11日 第14回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第8回ランチセミナー***
日時 2018年12月11日(火) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

杉山弘晃先生 (NTT)
気軽に雑談できるシステムの実現を目指して
本日のセミナーでは,身の回りに広がる様々な対話システム,特に雑談システムについて,NTTコミュニケーション科学基礎研究所での取り組みを中心に,多くの研究課題とそれに対してなされた様々なアプローチが事例的に紹介された.まず,人の対話の60%は雑談であり,雑談が重要であることが示された.一問一答型雑談での応答精度の向上と印象・対話体験の改善がこれまで積み重ねられてきたことが説明された.一問一答型雑談が安定してきた現在は,複数ターンに渡るより深みのある対話体験の実現へ向けた取り組みに力点が移ってきている.そのための取り組みとして,複数ロボットの連携による対話と,雑談の形をとっていてもある種の明確な目的性(議論,傾聴,知識伝達など)を備えた対話への取り組みが紹介された.人間にはごく当たり前のものである対話も,実体は言語的・心理的・社会的な様々なスキルを駆使しして行われる複雑な活動であり,どれが欠けても精彩を欠くことになる.そのような人の活動を再現しようとする対話システムにも多種多様な技術・デザインが求められる.いわば多くの花や樹木で彩られる庭園のようなものであり,本講演は,それらが少しづつながらも植えられ育まれており,近い将来に鮮やかな景色を作り出すことを予感させる内容であった.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2018年11月13日 第13回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第7回ランチセミナー***
日時 2018年11月13日(火) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

山川宏先生 ((株)ドワンゴ 人工知能研究所)
Beneficialな脳型AGIの 民主的な開発を先導する
今回のランチセミナーは(株)ドワンゴ人工知能研究所の山川宏先生.2014年にドワンゴで人工知能研究所を設立された山川先生は,2015年に全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBA)の代表に就任し,日本における脳型の人工知能構築を先導していらっしゃいます.
冒頭では深層学習に至るAI研究の歴史を概観した後に現在のAIの課題が挙げられた.現状で人のような知能を目指すAI研究は、乳幼児の発達過程を追う形でも進んでいる.しかし基本的な常識を獲得しつつあるが生後半年程度のレベルであり、未だ直感的な物理や心理的な背景を把握できないことが指摘された.一方で,ロボット自らが収集したデータをもとに初見の物体を操作できるUCバークレーの研究事例や,先月アナウンスされた米DARPAの研究募集内容が常識(コモンセンス)を獲得する機械の研究であることを指摘して,これらの課題に対する現在のチャレンジも紹介された.
汎用人工知能(AGI)は満足できるレベルで多くのタスクがこなせる知能であり,このようなAGIによって特化型AIが淘汰されること(一般化目的技術),特化型AIをまとめるゼネラリストが誕生することを予想した.またAGIに自律性を付加することで例外に対処できるようになり,生存能力やひいては創造力を持つAIが作られることを指摘した.より包括的には,未知の状況で推論できる汎化性と知識を獲得しようとする自律性の循環的な運用により知のフロンティアを開拓していくことがAGIの大きな目標であると述べられた.
このためには個別の技術を積み上げただけではできない知能を目指す必要があるが,そのために(1)知識の獲得・再利用性,そのための分散表現知識の分解(2)アーキテクチャ開発(3)仮説を探る理論の必要性をあげ,特に(1)について,山川さんらが行った事例として.深層学習モデルの内部パラメータから運動系列の性質を制御する抽象表現を学習する事例が紹介された.
次に脳全体のアーキテクチャに学ぶ,全脳アーキテクチャ構想について話をされた.AGIは簡単に作れるものではないが脳に学んで作ることで(1)開発の発散を防げること,(2)段階的に詳細化すればAGIに到達できる(脳という実例がある)点をあげた.脳型AGIの主要課題として,脳型AGIの実現すべき能力の選定(ロードマップ構築)・いかに特化したAIの寄せ集めとならないようにするか・神経科学が専門でないエンジニアの協力をいか得られるようにするか(開発人材の問題)の3つを挙げられ.これらに対してiterative開発・スタブ駆動開発・知識ベースの構築といった具体的な方策を提案し, これに基づくWBAの研究・開発の一環として昨年行われた眼球ハッカソンの紹介が行われた.ここでは脳型AGIについて望まれる性質を定めて評価が行われていることが示された.最後にAGIの独占を抑制する非営利団体による民主的開発の重要性を述べて,お話を締めくくられた.
脳型AGIという大きな目標を設定すべき意義と実践を,理学及び工学双方の視点で正面から語られた今回のセミナー.企業+NPOや若手の会という有志の集まりによる新しい形態で研究が進められているのも特筆すべき点で,興味を持った学生も多かったと思われる.人と協調する機械には幅広い汎化性能が求められることから,本プロジェクトのアプローチから学べることは非常に多いと考えられる.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2018年10月15日 第12回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第6回ランチセミナー***
日時 2018年10月15日(月) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

谷口忠大先生 (立命館大学情報理工学部 知能情報学科)
記号創発システム ~人間と記号・言語を用いて協調する知能を生み出すために必要なシステム論に向けて~
人間は社会において記号を使ってコミュニケーションを行っている。それは、人間が進化の結果形成してきた生物進化、文化進化の賜であり、環境適応の結果である。不確実な環境の中で、人間は言葉の仕様を、言葉の意味を動的に変容させながら、個として集団として環境に適応している。この結果、創発的な現象として生じているのが記号システムである。人間と記号・言語を用いて協調する知能(ロボット、もしくはAI)を生み出すということは、このような適応のサイクルの中で、人間と同様に適応し続けられる人工物を生み出すということに他ならない。これこそが記号や言語に関わる知能研究の挑戦である。  本講演では上記のような全体像を捉える枠組みとしての記号創発システムについて概説し、また、これに対する構成論的アプローチとしての記号創発ロボティクスとその成果の一部について解説する。具体的には教師なし学習に基づくロボットの言語獲得や場所・物体概念の獲得に関して触れる。さらに、それを支える技術的要素としての階層的ベイズモデルや、ディープラーニングに関しても触れたい。

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2018年7月30日 第11回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第5回ランチセミナー***
日時 2018年7月30日(月) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

中原裕之先生 (京都大学 大学院情報学研究科)
意思決定と社会知性の脳計算理解に向けて
講演概要:今回のランチセミナーは本学科知能情報学専攻の連携教授でもある理化学研究所脳科学センターの中原先生にお話し頂いた. まず始めに人の機能がどのようにして生物学的な実態から現れるかに興味があり,それを理解して行くのが「計算論」であるという話をされた.そして社会知性の脳計算・意思決定と学習・脳型知能という幅広い分野を「脳の計算」として理解したいという目標を語られた.計算論に基づくモデル化解析の目標として(1)モデルによって人に対する仮説を説明し行動を予測すること,(2)モデルの主要な計算が脳で起きている証拠を見つけること,を挙げられた. 本講演では特に社会知性の脳計算について解説を行って頂いた.社会には他者がいて我々は他者をシミュレーションする必要がある.定量的に社会的な意思決定を理解したい.具体的な定量化手法として強化学習理論を用いることができる.強化学習では報酬予測(価値)が行動を決め,価値は報酬予測誤差を用いて獲得される.強化学習を拡張して「心の理論」を「心の『脳計算』理論」にしたいという動機を語られた. 次にSuzuki et al., Neuron 2012を中心とした研究紹介が行われた.我々は他者の脳システムを何らかの形で再構成して意思決定をしているはずである.自分がそれをするときと同じ脳の領野・プロセスを用いて他者の心を推定しているのだろうか(シミュレーション理論),それともそのような方法は使わずに他者の入出力関係を学習するだけだろうか.前者の場合はシミュレーションした他者の報酬予測誤差等を推定しているはずである.強化学習とモデル化研究を組み合わせることで,他者の報酬予測誤差や行動予測誤差の推定に関わる脳部位を特定しシミュレーション理論が正しいことを示されたが,同時に自分と他者の違いが学習に生かされていることも紹介された.後半では他者の行動が自分の選択にどのような影響を与えるかを定量化する最近の研究の紹介が行われた. 社会性という捉えがたい研究対象に対して,実際にどのようなステップを踏んで研究が行われるのかを丁寧に解説して頂いたことで,学生にとって高次の脳機能に迫る実験デザイン・数理理論・データ解析の手法を学ぶ貴重な機会となった.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2018年7月4日 第10回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第4回ランチセミナー***
日時 2018年7月4日(水) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

中野倫靖先生 (産業技術総合研究所)
音楽・歌声情報処理に基づくインタフェース構築
音楽・歌声情報に関して、人の能力を補強する協調的知能へつなげるため、信号処理や機械学習による音楽・歌声情報処理技術と、それに基づいたインタフェース構築について述べる。近年、音楽情報処理分野の発展と共に、歌声に関する研究活動が世界的に活発に取り組まれ、学術的な観点からだけでなく、産業応用的な観点からも注目を集めている。そうした音楽・歌声に関する研究は、音楽・歌声固有の特徴に関する基礎研究から応用研究まで多岐に渡る。音楽・歌声信号処理技術が役に立つためには、ユーザ視点での問題発見を含め、対象ユーザの特性に合わせたインタフェース構築が重要である。最近では、エンドユーザが気軽に音楽や歌を制作・発表したり、それを聴いて楽しんだりする文化が広がっており、本講演では、主にそのようなエンドユーザを対象とした我々の音楽・歌声インタフェースの研究事例を中心に紹介する。

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2018年6月26日 第9回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第3回ランチセミナー***
日時 2018年6月26日(火) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

中臺一博先生 (ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン/東京工業大学)
ロボット聴覚とその音環境理解への展開 〜協調的知能の実現に向けて〜
講演概要:本講演では日本初の研究分野「ロボット聴覚」を立ち上げられてから現在に至るまでの展開をお話いただいた.研究開始当時,ロボットブームで人と話すロボットはあったが口元にマイクをつける必要があった.ヘッドセットを介してではなくロボット自らの耳で会話させたかったというモチベーションを語られた.次にロボット聴覚の主要課題として音源定位・音源分離・音声認識を挙げられて,これらを行うロボット聴覚ソフトウェア(HARK)のデモが紹介された.HARKを広く使用してもらうためのオープンソース化や講習会・ハッカソンなど精力的な活動が紹介された.
後半はHARKの展開としてクラウドサービス化や組み込み・車載応用だけでなく動物行動学・鳥の歌の解析など学術的な貢献も紹介された.またレスキューロボットとして雑音の多いドローンのマイクから助けを求める人の位置を特定する試みが紹介がされた.人にはほとんど判別できない音声からも定位を行えることがデモで紹介され感嘆の声が上がった.音源検出・音源同定のアーキテクチャについて先端アルゴリズムの紹介も行われた.
最後に人とのインタンフェースという視点から協調的知能について提案をいただいた.インターフェースのデザインが重要であるが,結局それはシステム設計の問題であり,内部システムも含めた「実システムの設計論」が重要という本質に迫るご意見を頂いた.学生の皆さんにとっては,中臺先生が取り組まれてきたロボット聴覚の紹介を通して,企業と大学を横断した研究活動を知る大変良い機会となった.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2018年5月11日 第8回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第2回ランチセミナー***
日時 2018年5月11日(金) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

金田賢哉先生 (本郷飛行機株式会社)
本郷飛行機のドローン開発 研究から社会実装まで 〜人とドローンのインタラクションに向けて〜
講演概要:本郷飛行機で行っているドローン開発とその展開について,研究レベルの基礎的な取り組みから,実証実験,サービス運用にいたる多彩な事例が紹介された.まず自律制御と遠隔操作の違いにふれ,現在巷にあふれるドローンが,ジャイロ・加速度センサーを元に姿勢安定制御を自動で行うとはいえ,本質的には遠隔操作(ラジコン)の域に留まることが指摘された.一方で,本郷飛行機でのドローン開発は,自律制御への指向性が高い.そして,人と身近に関わることを意識した研究がなされている.特に,計算資源の限られたハードを前提とした画像処理に基づく自律制御に注力しており,床のテクスチャ情報を用いた自己位置安定化や人物認識を用いた危険回避(見知らぬ人を避ける)が紹介された.また安全と効率のためにはハードウェアレベルでの設計・制御が重要であることが強調された.本郷飛行機独自開発のハードウェアでは,ローレベルの画像処理だけで墜落回避行動をとれるように設計されており,上位のアプリケーションレイヤーで致命的なエラーがおきても墜落を回避できるようになっている.実証実験・実サービスの経験からは,実際に社会に受け入れられ,期待したように一般の人に使ってもらえるようになるためにはドローンの外見の設計が非常に重要であることが事例に基いて紹介された.総じて,企業ならでは実地での知見に溢れた興味深い講演であった.

世話人 協調的知能共同研究ワーキンググループ

セミナーの様子


2018年4月25日 第7回協調的知能(CI)共同研究セミナー ***第1回ランチセミナー***
日時 2018年4月25日(水) 12:10-12:50
場所 国際科学イノベーション棟 1階ラウンジ

高橋英之先生 (大阪大学 大学院基礎工学研究科)
ミヒャエル・エンデのモモに憧れて 〜ロボットによる傾聴場面における心理実験とfMRI計測〜
講演概要:ミヒャエル・エンデ執筆の児童文学「モモ」の中では、他者の話を聞くことに長けた少女モモが登場する。モモに悩みを相談することにより、相談した人たちが自信を取り戻していく不思議な力を持っている。講演者の高橋英之先生は、人とロボットとのかかわりをモモに例えて「ロボットが人の悩みを聞いてあげることにより、人が自信を取り戻せるのではないか」との仮説のもと、そのメカニズムの解明を目指して心理実験手法や神経科学手法を用いて研究を行っている。その研究の中で、ポジティブな話題は人に対して話したがる傾向がある一方で、ネガティブな話になればなるほど、ロボットに相談したくなる傾向にあることを見出した。その脳メカニズムの解明を目指して実施したfMRI計測により、ロボットに対して自己開示している場合には、脳内の報酬系の活動が高まることを示唆する結果を得た。また、ロボットに対して相談することにより、個人間の思考の多様性が促進する結果を得ていることも紹介した。これらの人とロボットとのかかわりについての自身の研究結果より、人間のカウンセラーでは聞き出せないようなことを聞き出せる可能性があるとともに、人のコミュニティ内に触媒として傾聴ロボットを入れることにより行動の多様性が生まれる可能性があることを指摘していた。協調的知能共同研究講座が目指す「人と協調するAI」の実現のための重要な手掛かりとなることが期待できる講演であった。

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